好きになれとは言ってない
 あのとき、鳥を飼うのはよそうと言った課長の頭の中にも、今、私が思い描いたような結婚生活があったのでしょうか。

 などと思っていると、朝子が、

「遥、なにもらうか決めたの?」
と訊いてきた。

「え?」

 クリスマスプレゼント、彼氏になにをおねだりするか、という話になっていたようだ。

 朝子もだが、あのコンパで何組かカップルが出来た。

 人事部の願う通りに結婚退職になるかどうかは知らないが。

 人でなしな真が、
『彼氏の方を遠くへ飛ばしちゃえば、会社辞めてついてくんじゃないのー?』
と言って、みんなに、はたかれていたが。

 だが、一人だけ、そうなりそうな人物が居る。

 優樹菜だ。

 優樹菜はあれから、クリスマスコンパで出来た彼氏にベッタリで、今、此処にも居ない。

 その彼が二月の人事異動で、上海に転勤になるという噂があるので、そうなったら、辞めてついていくかもと言っている。

 急展開だ。

『遥さん、人事異動どうなるのか、課長に訊いてくださいーっ』
と不安な優樹菜に泣きつかれたのだが、いや、その辺のところは、もっと上の人が決めることだろうから、航も知らないのでは、と思っていた。

 しかし、騒がしい後輩だが、居なくなると寂しいな、と思う。
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