好きになれとは言ってない
 あのあと、お返し思いつかなくて、結局、食事を奢って終わりになっちゃったから。

 今度はなにか後に残るものを、と思っていると、
「遥、なにぼんやりしてんの?」
と雅美に訊かれる。

「いやあ、クリスマスプレゼント、なにあげようかなと思ってさ」

「あげるのも迷うわよねえ」
と渋い顔で、それらしき雑誌をめくりながら、朝子が言い、それに雅美が、

「いいわね、あんたたち。
 私も迷ってみたいわ」
と愚痴って、

「いいじゃない。
 まだ相手を選ぶ自由があるってことだから」
と流されていた。

 雅美は同じくフリーの亜紀を振り向き、訊く。

「亜紀さん、クリスマスはどうするんです?」

「ええっとね」
と何故か赤くなった亜紀は、

「ちょっと誘ってみようかと思って……」
と言う。

「えー、誰をっ?」
とみんなが盛り上がる中、遥が、ぼそりと、

「……小宮さんですね」
と言った。

 その照れ方、恐らく、間違いない。
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