好きになれとは言ってない
 格好いいし、仕事も出来るし。

 もっと堂々として、俺について来い、みたいな感じになりそうなものなのに、なんで、ああなんだろうな、と心底、疑問に思う。

 顔はそっくりなのに、対照的な真尋のせいなのか。

 生まれ持った性格のせいなのか。

 そこのところは謎だか。

 どちらにせよ。
 そんな課長が好きだ、と遥は思っていた。

「遥っ」
 いきなり名前を呼ばれ、

「は、はいっ?」
と顔を上げると、亜紀が、

「だから、あんた、たっぷり会社でいちゃつきなさいよ、人斬り課長とっ。
 小宮が、もうこりゃ絶対駄目だと思って、あんたをきっぱり諦めるようにっ」
と言ってくる。

 会社でいちゃいちゃって……。

 そんなことしてたら、私がリストラで切られます、と思いながら、遥は、たこ焼きの最後の一口をパクリと食べた。




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