好きになれとは言ってない
「髪を切ってあげるといいんだよ」
は?
今、何処から声が、と自宅リビングのコタツで、遥は辺りを見回す。
すると、向かいに座り、絵本を読んでいた翔子が愛らしい目をこちらに向け、言っていた。
「髪を切ってあげるといいんだよ。
泣いて喜ぶよ」
なんの話だ、と思ったのだが。
テレビで、クリスマスのプレゼントの人気ランキングなるものをやっており、自分は、それを見ながら、ひとりでブツブツ言っていたようなのだ。
それを聞いていた愛らしい翔子様が、この情けない叔母に知恵を授けてくださったらしい。
「あのね、クリスマスには、旦那さんに、髪を切ってあげると泣いて喜ぶんだよ」
……違うよ。
それ、髪を売ったけど、あーあってなっちゃう話だよ、と思ったのだが、可愛らしくアドバイスしてくれるので、突っ込まなかった。
まあ、髪を切って、いろいろあって、二人の愛が深まって泣いて喜ぶ、という最初と結論だけは合っていることだし。
っていうか、帰ったときから、翔子しか居なかったのだが。
姉、何処へ行った、と気楽な姉に溜息をつきながら、翔子に訊いてみた。
「翔子は、クリスマス、けんちゃんになにかあげるの?」