好きになれとは言ってない
「例のコンパ、やっぱ、大葉さんも来るんだ?」
とカムフラージュのように、特にいらない資料を手に小声で訊いてくる。

「そのようですね」

「じゃあ、私もメンバー入れといてよ」

 モテるな、大葉さん、と思いながら、
「それは大歓迎ですけど。
 でも、あのコンパ出ると、時代錯誤にも、結婚退職させられちゃいますよ」
と小声で返すと、

「ほんとにそんなことさせられるわけないじゃない~」
と亜紀は笑って、軽く言う。

 いやいや。
 奴はやりますよ、と、

『……あと十人だからな』
と呟いて、場を凍らせていた大魔王様を思い出していると、

「そんなのあんたの彼氏だけよ。
 みんな普通にコンパに来るわよ」
と言ってくる。

「……誰ですか、私の彼氏って」

 生まれてこの方、私は、私の彼氏とやらに、会ったことがないのですが、と思っていると、

「いやあね。
 人斬り……

 失礼。

 新海課長に決まってるじゃないの」
と亜紀は言ってくる。

 今、人斬り新海って言おうとしましたね……。
< 41 / 479 >

この作品をシェア

pagetop