好きになれとは言ってない
次の日の夜、航は帰りに真尋の店に寄っていた。
クリスマスだからと言って派手に飾り付けるような雰囲気の店ではないが。
さすがに入り口にはツリーがあった。
ゴールドとシルバーのオーナメントだけで飾られた、アンティークな雰囲気そのツリーを何処かで見たと思ったら、祖母の家の屋根裏部屋にあった奴だった。
店は相変わらず、真尋目当ての女性でいっぱいだったが、あまり騒ぎ立てるような客は居ないので、落ち着いている。
遥が、会社の騒がしい連中をたまに連れてきているようだが、むしろ店にとっては、迷惑なんじゃ……、と心配になるくらいだった。
カウンターの端に座っていると、真尋がすぐに来てくれた。
なんとなくクリスマスプレゼントの話をすると、真尋はすぐに、
「プレゼントなら、あのネックレスと同じシリーズの指輪とかあげればいいじゃん」
とさらっと答えてくる。
「あれも今回のもクリスマスプレゼントなわけでしょ。
シリーズものをあげるのもいいと思うけど」
「さすがだな」
と言うと、なにがだよ、と言った真尋は、
「でも、ほんとは他人の意見で選んだりしたくないんでしょ」
とこちらの気持ちを読んだように言う。