好きになれとは言ってない
「あ、ってことは、遥はもう結婚退職かあ。

 やあねえ。
 一から仕事教えて、やっと使い物になってきたところだったのに~」
と勝手にもう辞めるていで話が進んでいく。

「まま、待ってくださいっ。
 私、課長と結婚しませんしっ。

 会社も辞めませんよっ」
と亜紀の肩をつかむ。

「あんた声が大きいわよっ」
と抑えた声で、亜紀は言ってくる。

 確かに、何人かがこちらを振り返っていた。

 なんでそんな話になってるんですか。

 この会社では、ちょっと電車でしゃべって、本を貸し借りしただけで、付き合って、結婚しなきゃいけない決まりでもあるんですかーっ、と言いたかったのだが、亜紀はもう自分の仕事に戻っていて、遥の弁解など聞く気はないようだった。





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