好きになれとは言ってない
 



 まずいな。
 このままでは大魔王様との噂により、相手が寄って来なくなる。

 いや、もともと来てはいないのだが……と思いながら、廊下を歩いていると、

「あ、遥。
 私もメンツに入れてね」
と通りすがりの先輩女子にいきなり声をかけられる。
 
 え? は? と振り返っていると、今度は、

「おい、そこのリストラ課長のコンパ係」
と通りすがりの男性社員が手を挙げて来た。

 誰がですかっ、貴女はっ、と思っていると、真尋ほどではないが、今風に整った顔のその男は、

「男は課長が集めんの?
 もし、人数足らないようだったら、俺も入れて」
と言ってきた。

 いや、だから、まず、貴方は誰なんですか……。

 何度か見たことはある気がするのだが、とそのまま行ってしまおうとする男を振り返る。
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