好きになれとは言ってない
 航は渋々といった感じで口を割る。

「だが、遥を誘うのは、ハードルが高い……」

「いや、今、誘ってるも同然じゃないですか」
とこちらを指差し、小宮は言うが、

「そうじゃない。
 遥に言うのも緊張するが、お義父さんが許してくれるとは思えない」
と沈痛な表情で言う。

 そ、それは確かに……。

 っていうか、なんでいきなり、旅行? と思っていると、
「だから、他の奴を旅行に出そうと思ったんだ」
と言い出した。

「えっ?
 他の女性と旅行に行かれるんですかっ? クリスマスッ」
と遥が言うと、

「いや、俺も行ったんじゃ、意味ないだろ」
とよくわからないことを言い出す。

 遥……となにやら思い悩んでいるらしい航が、今日は酔ってもいないのに、いきなり遥の手を両手で握ってきた。

 ひーっ。

 小宮が居るので、出来るだけ、動揺しないようにしたつもりだったのだが、全部顔に出ていたようで、小宮は物珍しそうに遥の表情を眺めている。

 航はそんなことにも気づかないように遥の手を握ったまま言ってきた。

「遥。
 お前、俺のすべてが知りたいか?」

「は、……はい?」
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