好きになれとは言ってない
 航は言ったあとで、上を向いて少し考え、
「……今のは違う意味に聞こえるな」
と呟いていた。

「それに、こういうのは大抵、男の自己満足だからな。

 だが、わかった。
 もう少し交渉してみるよ」

 いや……なにがなんだかわからないんですが、と思いながらも、そのまま手を握られていた。

 普段から考えごとを始めると、あまり周りが気にならなくなるらしい航は、今も、遥の手を握っていることも、周囲から見られていることも気にならないようだった。

 わ、私は気になりますっ、と遥は思う。

 っていうか、だ、大魔王様が、ずっと、私の手を……っ。

 こ、これは一体、どうしたらっ!?

 手とは言え、航と肌が触れていると思うだけで、緊張してしまう。

 助けてください、神っ!
と小宮を見たが、恋愛の神様は、さして面白くもなさそうに、

「いや、相変わらず、進展してなさそうだね、このカップル」
と呟いただけだった。






< 446 / 479 >

この作品をシェア

pagetop