好きになれとは言ってない
 腕を組んだ航は苦い顔で言う。

「祖母の家に天体観測用のドームがあると言ったろう」

「やっぱり、お坊っちゃまなんですね、課長」
とまた優樹菜たちが余計な合いの手を入れてくる。

「最初は星がよく見られるところに一緒に行きたいなと思っていたんだが。
 旅行なんてお父さんが許さないだろ」

 航はせっかく得られた遥の父からの信頼を失いたくないようだった。

 ……いや、私よりもか、とちょっと思ってしまうが、まあ、将来のことを真剣に考えてくれているからだろう。

 そう思えば、嬉しくないこともない。

「だから、クリスマスに祖母たちが出かけるなら、あそこのドームにお前を連れて行こうかと思ったんだが。

 祖母たちが、今年に限って、何処にも行かないと言い出したんだ。

 だから、旅行でもプレゼントして、出かけてもらおうと思ったのに。

 どうも俺が遥を連れてこようとしていると、真尋から聞きつけたらしくて、自分も遥に会いたいと言い出したんだが、いいか?」

 いいかって。

 既に断れない感じなんですが……。

「課長。
 そりゃないですよー」
と優樹菜が言ってくれる。
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