好きになれとは言ってない
 いや、私もそう思ってるんですけどね、と思いながら、
「……私は、ただの大魔王様の小間使いですよ」
と答える。

「そうなの?
 じゃあ、ああいう自衛隊員みたいなのが好みってわけじゃないんだ?

 へー。
 じゃあ、なんで、俺に興味ないの?」

 筋肉フェチかと思った、と男は言い出した。

 自分に興味がないのは、身体の好みが違うからだろうとか、どんな自信過剰だ。

 っていうか、偏見だ。

 新海課長は、見かけが体育会系なだけで、本とか好きなんですよーだ、と思っていると、
「おーい。
 遅いぞー」
と小会議室から顔を覗けた人が男を呼び出した。

「あっ。
 お前のせいで遅れかけたじゃないかっ」

 いやいや。
 私のせいですか? と思ったのだが、

「じゃあな、古賀遥」
と男は気安く頭を叩いて行ってしまう。
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