好きになれとは言ってない
「なんで、初めてのクリスマスがそんな緊張する催しになっちゃうんですか」

「……俺もそんなつもりはなかったんだが。
 もう祖母も料理を頼んでしまって。

 というか、どうせなら、遥を紹介したいかと」

 そういえば、課長も真尋さんもすごいおばあちゃんっ子だって聞いた気がするな、と思う。

 そんなおばあさまに紹介していただけるのは嬉しいのだが。

 なんか……

 さっきまでの、クリスマス誘ってもらえないんじゃないかという緊張から一転、違う緊張感に包まれてしまったな、と思う。

 ど、どんな人なんだろう。
 課長のおばあさま。

 最初の頃の課長のように厳しい人なんじゃないだろうか、とチラと航を窺うと、何故か目をそらしてしまう。

 ……課長、とその視線を追うように顔を動かしたが、やはり、また、そらされる。

 なにかこう、嫌な予感しかしないんだが……と思っていると、渡り廊下のガラス扉が開いて、亜紀と小宮が揉めながら入ってきた。

「いやー、その店、あんまり好きじゃないんだよねー」

 どうやら、亜紀は、本当にクリスマスに小宮を誘ったようだった。
< 450 / 479 >

この作品をシェア

pagetop