好きになれとは言ってない
なんだか二度目な気がするクリスマス
クリスマス・イブだ。
今年は土曜日なので、会社は休みだ。
昼過ぎから航と出かけた遥は、二人きりの時間を満喫した。
と言っても、二人で港近くでお茶をしたり、お店を覗いたりとかその程度のことなので。
亜紀に言ったら、
「何処が二人を満喫してんのよ」
と言われそうだったが、遥的には満足だった。
っていうか、課長の車、緊張するんですが……と遥は思っていた。
勤務時間に乗った会社の車でさえ、課長と二人きりだと緊張したのに、と思う。
航の車は、落ち着いた紺色の大きなセダンで。
まだ新車の香りがするな、と思ったら、買ってからあまり乗っていないのだと言っていた。
「なんだかんだで、通勤には、電車の方が便利だしな」
まあ、そうですね。
いつでも呑んで帰れるし、と思いながら、チラと車の時計を見た。
……夕方ですね。
いよいよですか。
遥は、ひとり手に汗握り、航の顔を見上げる。