好きになれとは言ってない
　航は大きく息を吐いたあとで、
「……よし、行くか」
と店の駐車場から車をスタートさせる。

　か、課長も気合が必要なんですか？　と不安に思っているうちに、航の祖母の家に着いていた。

　案の定な大邸宅だ。

　コの字型になっている家の真ん中の庭園は綺麗に手入れされており、専門の業者がやってるんだな、という感じだった。

　東側の建物の上に、噂の天体ドームがある。

　まあ、これはちょっと楽しみなんだが。

　やっぱり緊張するな、と思いながら、出てきた品のいい老紳士に案内された。

　一瞬、執事の人かと思ってしまったのだが、航の祖父だと紹介される。

　大学教授だったというこの品の良いお祖父さまは、何故か孫にも敬語だった。

「航さん、可愛いお嬢さんですね。
　清乃さんが、昨日から楽しみにしていましたよ」

　そう言われ、航は苦笑いしている。




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