好きになれとは言ってない
 でも、まあ、あの二人が懐いていたと言うのなら、厳しいかもしれないが、お義母さまがおっしゃる通り、悪い人ではないのでは。

 そう思い、緊張をほぐそうとした瞬間、航の祖母、清乃(きよの)が姿を現した。

 ほぐそうとした自分を殴りつけたくなるほどの緊迫感に包まれる。

 助けて、まどかさんっ!

 遥は、何故か航ではなく、まどかに助けを求めていた。

 お祖母ちゃんっ子の航は、此処ではあまり味方ではない気がしたからか。

 ゆっくりと清乃が靴音を響かせながら、遥の前まで来る。

 すみません。
 皆さん、黙らないでください。

 そこのシェフの人も。

 このパーティ、身内の催し物のはずなのに、どういうわけだか。

 ホテルの立食パーティのようだし、バーテンダーの人が酒を作ってくれるし、ローストビーフはシェフっぽい人が切り分けてくれるようだった。

 先程まで、にこやかに航の父と話しながら料理の説明をしていたシェフも清乃の登場に沈黙する。

 あの~、課長の大切なお祖母さまにこんなことを申し上げてもいいのでしょうか。

 横目に航を見ながら遥は思う。

 ……怖いんですが。
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