好きになれとは言ってない
 航と結婚したら、その金は遥の金でもあると思っているからだろう。

 別にいらないが。

「遥さん」

 ふいに呼びかけられ、
「は、はいっ」
と遥は清乃を振り返る。

「航を頼みます」
と突然、深々と頭を下げられた。

 ええっ? と逃げ腰になると、清乃は、
「航は、こう見えて、突然とんでもないことをしようとしたり、困ったところのある子なので、貴女がちゃんと導いてやってください」
と言われた。

 そ、そうですね。
 リストラする人が見つからなかったら、会社辞めようとか言ってますしね……。

 呑んだくれている千佐子に喝を入れに、清乃は言ってしまった。

「素敵なおばあさまですね」
と遥は、そのしゃっきりとした後ろ姿を見送る。

「……お前とは気が合うと思っていたよ」
と航は笑ったが、いや……そこのところはちょっと疑問なんですが、と思っていた。





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