好きになれとは言ってない
「商品券だ。
 好きなものを買え」

 やっぱりか……。
 本当に不器用な人だ、と苦笑した。

 でも――。

「気が合いますね、課長」
とその二つを手に遥は微笑む。

「実は、いっそ、髪を切ろうかと迷ったんですが」
と言いながら鞄を開ける遥の斜め下で航が、髪? という顔をする。

 一応、クリスマスの柄でラッピングされている同じような封筒を差し出した。

「図書券です。
 本にしたかったんですけど。

 もしかして、課長おんなじの持ってたら困るかなあとか思って」
と笑う。

 なんだか似た者同士だな、と思っていた。

 いまいちロマンにかけるところも。

 だが、嫁姑だけでなく、夫婦も似ていると言うから、きっと私たちはうまくやっていけるはずだ。

 ……いや、課長に結婚してくれと言われたらの話だが。
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