好きになれとは言ってない
 二つの贈り物を胸に遥は言った。

「私、課長のこと、まだなんにも知りません。
 なんの本を持っているのかさえ知らなかった。

 だから、此処に連れてきていただけて、本当に嬉しかったです。

 課長の自己満足なんたかじゃありません。

 私、課長のすべてが知りたいんです」

 あのとき、航が言ったのと同じことを言いながら、やっぱりちょっと違う意味にも聞こえるな、と遥も思っていた。

 さっき、誰か入ってきたら、困るからしないと言っていたくせに、手すりをつかんだ航は身を乗り出し、二度目のキスをしてきた。

「遥……。
 結婚しよう」

 自分を見つめ、そう言ってくる。

 正直言って、びっくりしていた。

 この人、プロポーズするまでも時間がかかりそうだな、と思っていたからだ。

 そう考えたことが伝わったようで、航が言ってきた。

「今だ、今。
 今なら言える。

 お前の考えでいけば、此処は宇宙なんだろ。
 通常の空間じゃないから」
< 472 / 479 >

この作品をシェア

pagetop