好きになれとは言ってない
 いい気分のまま、眠い目をこすっていたのだが、やがて、頬がひんやりしてきた。

「あら、遥寝てる」
と姉の声がした。

 いつの間にか、こたつの上に撃沈していたらしい。

「航さん、部屋まで運んでやってよ。
 今日はお姫様抱っこで」
と姉が笑い、父親の手前か、航が惑う声が聞こえた。

「ああ、ほら。
 お父さんも寝ちゃったから。

 今よっ、航さんっ」

「兄貴やんないんなら、俺がやるよ」
とからかうような真尋の声がする。

 誰かがそっと遥の足の下に手を入れ、抱き上げた。

 それは、いつか感じたことのある熱い手だった。

 抱き上げられ、階段を上がっていく足音を聞いていた遥の耳に、まどかさんの声が聞こえてきた。

「アケマシテ
   アケマシテ、

 オメオメオメデトウ

  ゴザイマスッ!

 星ガ 爆発シテモ

 オジイチャン オバアチャンニナッテモ 

 ズット ズット ソノ先マデ――」
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