好きになれとは言ってない
 すると、航は、
「誰だって嫌だろ、リストラするのなんて」
 他に引き受け手もないようだったからな、と航は言う。

 ……意外だ。

 みんなが嫌がっているから引き受けたんだったのか、と思った。

「まあ、出来るだけ、後の仕事がどうにかなりそうな人にお願いしてはいるんだけどな」

 そういえば、遥の居る総務でリストラされた人は、実家の家業を継ぐと言っていた。

 出来るだけ、後の受け皿がある人を選んでいたようだ。

 それにしても、気持ちのいい仕事ではないだろうに。

「女子社員なら、相手が居て、結婚退職するタイミングを窺ってそうなのとかな」

「まあ、結婚後も仕事続けたい人と、そうでもない人が居ますもんね。
 じゃあ、盛大にお見合いパーティとかやるといいですよ」

「コンパでいいだろ。
 お前、手配しろ」
と航が言ってくる。

 ええーっ? と声を上げると、少し笑った。

 わ。
 大魔王様が笑った、とちょっと、どきりとしてしまう。
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