好きになれとは言ってない
 ああ、また、勝手にメンツが決まっていっている……。

 どうしたらいいんでしょうか、大魔王様、と思っていると、トレーを手にした大葉と航の姿が見えた。

 席を探しているようだ。

 大葉は笑って手を振ってくれたが、隣の航は、まるきり他所を向いて席を探している。

 こらーっ、新海っ。
 人に面倒事を押しつけておいて無視かっ、と思ったとき。

 念が通じたのだろうか。

 航の顔がこちらを向いた。

 思わず、手招きしてしまう。

 やっておいて、課長に手招きとか、どんな無礼な部下だ、とは思ったのだが、

 本を貸し借りし、美形の弟さんを見せていただき、本来の業務に関係のないコンパの世話までした挙げ句に、勝手に、恋人だという根拠のない噂まで立てられているのだから、まあ、いいだろう、と判断する。

 だが、真が横で怯えていた。

「うわっ。
 お前、なに、大魔王召還してんだっ」

 しかも、手招きでっ! と訴える。
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