好きになれとは言ってない
「でも、この人数、全員呼ぶのなら、会場、かなり広くないといけませんが」
と携帯を見ながら、呟くと、

「いっそ、会社の大ホールとか借りちゃったら?」
と大葉が適当なことを言い出す。

「……そうですね。
 もはや、これは社内行事ですよ」
と言うと、

「いいぞ、会社のホールでも」

 借りられるようにしようか、と本気なのか、航が言ってきた。

 そんなところで盛り上がれるか、と思いながら、
「じゃあ、もう、ついでに、社長に挨拶でも頼んだらどうですか?」
と言ってみる。

 全員がコップを手に緊張したまま、二時間過ぎるさまを想像してしまった。

 そもそも、この人、コンパって行ったことあるのだろうかな? と思いながら、遥は、もうこちらを見てはいない航の後ろ頭を眺めていた。





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