好きになれとは言ってない





 翌日、遥は携帯のアドレスを確認しながら、職場の廊下を歩いていた。

 参加者のリストでも作ろうかな、と思っていたのだ。

 結構大変そうだな。

 だいたいの年齢とか部署とかも入れた方がいいだろうし。

 でも、仕事じゃないから、仕事中はできないしなー。

 彼氏も居ないのに、太鼓持ちをやれとか言われて、ちょっとむなしいのに、この大作業。

 新海課長が残業代出してくれないだろうか。

 お金じゃなくてもいいんだが。

 本とか、真尋さんのナポリタンとか、と考えていると、前から、航が来た。

 一瞬、どきりとしてしまい、いやいや、なんのどきりだ、と自分で思いながら、
「おはようございます」
と頭を下げる。

「おはよう」
と言ってあっさり航は通り過ぎた。

 思わず、足を止め、振り返る。

 なんなんですか。

 なんなんですか、その態度は~。

 いや、隣りの課の課長としては、それでいいのだが。
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