好きになれとは言ってない
「まあ、俺もひとりなら引き受けられないこともないが」

「え?」

「結婚退職だよ」
と大真面目な顔で言いながら、本を鞄にしまいかけ、ふと思いついたように、航は遥の膝にそれを放った。

「じゃあな、古賀遥」

 あの……フルネームで言われると、リストラ宣告されたようで怖いんですが。

 だが、扉の側でそう言い振り返った航を近くの女子高生が見ていた。

 まあ、見た目だけなら、そうなるよな。

 つい見ちゃうよな。

 ……社外の人には、『人斬り新海』なんて関係ないもんな。

 それにしても、なんでこれ貸してくれたんだろう。

 読めってことだろうか。

 なんとなくページを捲った遥は、そのまま車庫まで行ってしまった。





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