先輩！小説の主人公になってください！
「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。」

学長の長いあいさつが始まった。

私は退屈だったので書きかけの小説のことを考えていた。

でも、やっぱり桜の下で出会った人のことが気になって仕方なかった。

‥あの人、先輩だよね。どこの学部の先輩で部活は何をやってるのかな？‥なぜか気になる‥。

「新入生代表起立！」

「あっ‥はい！」

ふいに現実に戻された。私は立ち上がった。

‥ん？私て新入生代表だったけ？

すると周りから笑い声が聞こえてきた。

その直後、隣の子が小声で教えてくれた。

「新入生代表はあちらに座ってる人だよ。早く座った方がいいよ。」

それを聞いて私の顔は赤くなった。そのまま穴があれば入りたかった。
つまり私は考え事をしていたあげく間違って立ってしまったということだ。


式は順調に進み地獄のような時間がようやく終わった。

私は恥ずかしさのあまり早く行こうとしたが、そこに呼びかける者がいた。

「伊織！」

振り返るとそこには高校時代の友人、野瀬彩月（のせ さつき）がいた。

「さつき！」

私はさつきにかけよった。

「あんた、入学早々やらかしてたね。何あれ？私、笑いこらえるの必死だったんだよ。」

さつきは目に涙を浮かべながら言った。

「そんなに笑わなくたっていいじゃん！！人間だもの。失敗はするよ！」

「はいはい。こんなところでみつを先生を入れてこないでね。まぁ、あんたのことだからまた、空想の世界にはいってたんでしょう？」
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