先輩!小説の主人公になってください!
俺は1人、駅に向かって歩いていた。
「柊人先輩!!!」
うしろから声がしたので振り返れば大和が追いかけてきていた。
「い‥一緒に、か‥帰ってもいいですか?」
走ってきたのか息が切れていた。
「‥‥うん。‥いいよ。」
俺と大和は2人、並んで帰ることにした。
しばらくして大和が口を開いた。
「‥柊人先輩‥怒って‥ますか?」
それも、おそるおそる聞いてくる感じだった。
「‥怒ってないよ‥。ただ、戸惑ってるだけ。」
本当に俺は怒ってなどいなかった。でも、頭だけはついていかない。
「こんなこと‥俺が言えたことじゃないですけど‥伊織のこと怒らないでください。」
大和は真剣な顔で言った。
そんな大和の顔を見てたら自然と笑いが込み上げてきた。
「怒るわけないじゃないか。あいつはわざとやったわけじゃないからな‥。」
俺は怒るどころか心臓が、すごくドキドキしていた。
「でも、先輩!あれ‥先輩にとってファーストキスだったんじゃないですか?」
「‥‥俺は、別になんとも思ってないんだよ本当に。ただ‥あいつのことを少し、気にするよ‥。」
俺の中に伊織の顔が思い浮かぶ。
「キスの相手が俺でよかったのかな‥。」
「先輩‥。」
2人の間に重苦しい空気が流れる。
「あいつ今日のこと覚えてないかもしれないけど、そのことを伝えた時、あいつ傷つくかもしれない‥。伊織にとってもファーストキスだったかもしれない。‥それが‥1番、俺の中で悔やまれる。」
そんなことを話していると駅についた。
近くに住んでいる大和とはここでお別れだ。
「大和‥。俺は大丈夫だから、伊織のこと頼むな。じゃあ、お疲れさま。」
「お疲れさまです‥。」
そう言って俺は大和に背を向けて歩きだした。
今日はいろいろなことがあった‥。
するとあのキスシーンがふとよみがえる。
あ‥あれ?
途中で立ち止まり思わず俺は口元を手で押さえてしまった。
な‥なんで、こんなに‥ドキドキしてるんだろう‥。
なんか‥顔まで火照ってきたようだ‥。
きっと風邪でもひいたんだ。今日は早く帰って寝ることにしよう。
俺は再び歩き始めた。