先輩!小説の主人公になってください!
そう言うとその人は去っていた。

次の部活紹介も始まったが、伊織はあの先輩の勧誘が頭から離れなかった。

な‥何あれ‥すごく、話し方が上手!あの人も小説を書くのかな?だとしたらどんな小説を‥。

「‥おり‥伊織!!聞いてる!?」

「えっ!な‥何!?」

私は彩月に肩を揺さぶられ現実に戻された。

「もう、紹介終わったよ。みんな帰ってるよ。」

周りを見るとみんなが荷物を持って立ち上がっていた。

「あっ‥ご‥ごめん。ボーっとしてて‥。」

「また、考え事してたでしょうー。もう、伊織の悪い癖だよ。」

伊織は呆れたように言った。

「ごめんごめん。じゃあ、私達も帰ろうか。」

「そうだね。それにしても、本当に伊織はマイペースなんだね。」

「これが私の短所でもあり長所でもありますから。」

2人で笑いながらホールを出た。


ホールから出ると暖かな日差しが真っ直ぐ、私に向かって差し込んできた。
今日は入学式だけなので、これで帰れるのだ。

前を行く彩月の背中に私は声をかけた。

「彩月。部活、何にするか決めた?‥もし悩んでるんだったらさ、お節介かもしれないけどさ‥」

言うのが恥ずかしくて言葉がおかしくなってしまう。

すると彩月が口を開いた。

「よしっ!私、決めた!」

「えっ!?何に?」

「文芸部に入部する!」

思ってもないことが彩月の口から出てきたから、私はすぐには反応できなかった。

彩月が私の方を振り替えって言う。

「私てこう見えて読書とかすごく好きだったんだ。だから興味がないわけではなかった。大学は思い切って興味のあることをやってみるよ!」

彩月は笑いながら言った。

「さ‥彩月ー!!」

私は彩月に抱きついた。

「こらっ!伊織!こんなところで抱きつかないでよ!恥ずかしいでしょ!」

「ごめん。でも、うれしくて‥。彩月と一緒の部活をやれるなんて‥。じゃあ早速、明日提出しに行こ!」

「うん!」


私‥彩月と友達になれて本当にうれしいよ‥。

こんなこと彩月の前では言えないけどね。

私と彩月は新たなドアを開けようとしていた。
< 4 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop