先輩!小説の主人公になってください!
「いいんですよ。彩月が今、一緒にいたい人は大和先輩ですから。きっと私が出る幕はないです。」
あの様子から彩月と大和先輩はつき合うことになったのだと思う。
「じゃあ、伊織は俺と帰らない?」
「えっ!?」
驚いて隣を見ると柊人先輩が手を差し出していた。
「‥手はまだいいです。でも、一緒に帰りたいです。」
「うん。じゃあ行こう。」
そう微笑むと柊人先輩は微笑んで先に歩き始めた。
私もその後をついていった。
柊人先輩と別れて自宅のアパートに向かうと玄関の前に彩月が座って待っていた。
「あっ!伊織、遅い!」
「えっ!?彩月、どうしたの!?帰ったんじゃ‥」
「伊織、今日はバイトあるの?」
戸惑っている私に彩月は聞いた。
「今日は休みだけど‥。」
「伊織。今日、泊まってもいいかな?嫌だったら私の家でもいいんだけど‥どうかな?ちゃんと作るのも手伝うから。」
「いいよ。私の家でやろう。」
断る理由もなかったから私は快く許可した。
「ありがとう、伊織。後で布団とか持ってくるよ。」
「それなら大丈夫だよ。あまってる布団とかあるし、それ使って。」
私は玄関を開けながら言った。
玄関の扉が開き、私が先に入った。
こんなときのことも考えて部屋を掃除しておいてよかったなーと改めて思った。
「あのさ、伊織。」
「ん?」
彩月が靴をぬぎ玄関にあがったところで私の目を見て言った。
「この前は‥きついこと言ってごめん。伊織に八つ当たりしちゃった。本当にごめん。」
「私もごめん。夢中になりすぎてまわりが見えなくなった。しばらくは自粛するから安心して。」
「ううん。伊織、私にも文学の本を紹介して!」
「えっ!?」
私は驚いて聞き返してしまった。
「このままだったら‥大和先輩には近づけないから‥。大和先輩と文学を共有したいの!」
「‥‥‥。」
私は驚きのあまり返す言葉もなかった。
愛の力てすごい!!
「あっ‥でも、大和先輩と共有するためだけに読むんじゃなくて、自分のためでもあるから!か‥勘違いしないでよね!」
普段は言わないツンデレが出ていてかわいいなと思ってしまう。
「いいよ。何冊か持ってるし、貸してあげる。」
「伊織、本当にありがとう!」
「そのかわりさ、条件と言ってはなんどけど‥私とも共有しない?」
私は居間に入り彩月に合いそうな文学を探しながら言った。
「私、彩月とも文学の話したいから。どう?この条件のむ?」
私はいたずらぽく言ってみた。