先輩!小説の主人公になってください!
柊人side
俺は空きゴマの時間を利用し大学の構内にあるバスケットコートで一人、ボールをついていた。
ドリブルしたりシュートを決めたりする。
すると‥
パチパチパチ!!!
どこからともなく拍手をする音が響いた。
見ると、バスケットコートに入ってくる大和がいた。
「さすが柊人先輩ですね!俺も混ぜてくれませんか?俺も空きゴマで暇、してたんですよ!」
「ああ、いいよ。」
そう言って俺は大和にボールをパスした。
「言っておきますけど先輩。俺に遠慮はいらないですからね。」
そう笑顔で言う大和。
随分と挑発的な言動だ。でも、大和のそういうところ嫌いじゃない。
「俺は遠慮も何も最初から大和には遠慮するつもりなんかないよ。」
だから俺も笑顔で大和に答える。
大和はボールをつきはじめ俺と向かい合った。
「でも、まさか先輩から提案されるとは思いませんでした。」
「何が?」
そう言ったと同時に大和がドリブルをしかけ、俺をぬこうとした。
‥が俺は大和が進む進路をふさいだ。なおも、ボールは大和が持っている。
「先輩が家を提案してくれたことです。どういう風の吹き回しですか?」
そう言うと大和はすきをつき、レイアップシュートを決めた。
俺は落ちたボールをただ、見つめることしか出来なかった。
「以前の先輩なら、そんなことしないだろうなと思ってたんですよ。家のこととかあんまり話したがらないし、それが急に招待したので正直、驚いています。」
そう言って、大和は俺にパスを出した。
「次は柊人先輩の番ですよ。俺、絶対に止めますから。」
俺はパスされたボールを見つめながら呟く。
「‥めずらしい‥か‥。」
俺はそう呟くといきなりジャンプしてゴールめがけてボールを投げた。
「えっ!?」
大和の驚いた声が聞こえたかと思うとボールはゴールネットに吸い込まれていった。
あまりの大技に一瞬、沈黙が訪れる。
俺は落ちたボールを持った。
「大和。」
俺は大和の方を振り向いて行った。
「俺には、今さら見られて困るものなんてないよ。だから、みんなを家に招待した。ただそれだけだよ。」
「そ‥そうですか?」
「それに‥今、すっごく部活楽しいからさ夏とかみんなといられたら楽しいだろうなと思って。」
俺は大和にパスを出した。
「フッ‥そうですか‥。先輩が嫌だと思いながら言ってるんじゃなくてよかったですよ。」
「心配してくれてありがとうな大和。俺は大丈夫だから。」
そう‥。あの部屋さえ入らなければ、誰も俺の過去は分からない。
「そうですか?何かあったら、遠慮なく言ってくださいよ。‥よし、じゃあゲームを再開させましょう!俺もさっきの柊人先輩みたいに華麗なシュートを決めてみせます!」
「素人にはムリムリ!」
バスケットコートには俺と大和の笑い声が響いた。
これから長い夏が始まろうとしていた。