先輩!小説の主人公になってください!
「柊人てさ‥なかなかおちないよね。伊織みたいな可愛い子、私だったらつき合うかな。」
ふと‥私の頭に寂しそうな柊人先輩の顔が浮かんだ。
「あの‥柊人先輩て、出会った頃からあんな感じだったんですか?」
「‥そうだね‥。私もあんまり1年の頃のことは覚えてないんだけど、もしかしたら今よりも大人しかったかもしれない。」
「今よりも大人しかった?‥じゃあ、ほとんど、無口だったんですか?」
私は前のめりになりながら咲和先輩に聞く。
「無口だったけど、誰も寄せ付けないて感じだった。私、柊人が誰かと一緒にいるとこ見たことないんだよね。誰とも関わらないて感じ。」
「そうなんですか‥。」
柊人先輩は‥人を寄せ付けない、何かを持っている‥。
「でも、今年になって柊人、明るくなったよね。」
「えっ!?」
「だってさ、伊織と出会って柊人明るくなったんだよ。見てて分かるよ。それに、伊織と話しているときの柊人すごく楽しそうだしね。3年間一緒にやって来てるけど、あれだけ楽しそうな姿みるの初めてだよ。」
「確かに‥最近、よく話してますよね。なんか‥伊織にだけ心を許してるみたいな。」
そこで彩月が口をはさんだ。
「えっ!?それはないよ!だって、柊人先輩は誰にでも話せる人だし!」
私は慌てて首を振るが‥
「私は3年間一緒にいるけど、あんな風にはなったことないよ。やっぱ、伊織にひかれつつあるんだよ。部活、初日に小説の主人公になってください!て言ってたもんね。」
「あぁー!私の黒歴史ですからそれ以上は言わないでくださいー!」
私が顔を真っ赤にさせて言うもんだからみんなの顔には笑顔が広がった。
「まぁ、今でも柊人のことは好きなんでしょう?」
「‥す‥好きです‥。」
「じゃあ、伊織の恋が叶うように応援しないといけないね。何かあったらすぐに言いなよ?すぐに相談にのってあげるから。」
「わ‥私も!」
咲和先輩に続いて彩月も続けて言ってくれた。
「あ‥ありがとうございます!!」
私の心は暖かくなった。
「さて、そろそろ寝ようか!」
そう言って咲和先輩は切り上げようとしたが、私は1つだけどうしても気になることがあった。
「あ‥あの‥聞きたいことがあるんですけど‥」
「なあに?後輩ちゃん?」
咲和先輩がふざけて聞く。
「咲和先輩はどうして文芸部にはいったんですか?」
この質問を口にした途端、急に静かになった気がした。