不安の滓
 妻はすでに家に帰ってしまっていた。
 そのことが、俺の足を急がせる。

 万が一にも、妻と愛子が鉢合わせになってしまったら――妻の身が危ない!

 家に着くと、妻は台所に立っていた。
 こちらに背を向けて、夕食の準備を整えている。
 妻の無事に、ホッと胸を撫で下ろした。

「ただいま」

 まだ妻は何がこの家に起こっているのかは知らない。
 誰かが留守中に出入りしていることを、どうやって伝えれば良いのか。
 あまりに突拍子もない話で、信じてもらえないかもしれないが、小包の件を含めて話しておかなければ。
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