不安の滓
「いやねえ、忘れたの?」

 そう言いながら、里美がキッチンの収納を開けた。そこからは、膝を抱えたままの姿勢の人間がゴロンと転げ落ちた。
 その顔を見ると……里美の父親だった。

「ホラ、ここにも……」

 次は冷蔵庫の野菜室を開ける。
 そこには、里美の母親の頭部だけが納められていた。

「天井裏だって……あなたがしまったんじゃない。いやね……忘れっぽいんだから」

――ああ、そうか。

 愛子も、里美の両親も。
 俺が全て片付けてたのだった。
 そのこと自体を忘れていた。
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