不安の滓
 しかし、ある日のことである。

 俺は仕事を終えて家に帰り、ひとっ風呂浴びてビールを飲もうと冷蔵庫に手をかけた。
 冷蔵庫から漂う冷気を心地良く思いながら、冷蔵庫の三段目に置いてあるはずのビールを探す……が、見付からない。

 今朝のテレビで流れていた天気予報。『今日は例年よりも暑くなります。熱中症には充分にご注意ください』と女性キャスターが話しているのを聞いて、それならば仕事終わりのビールもさぞ美味いだろう――と、この瞬間を楽しみにして、朝のうちにビールを冷蔵庫で冷やしておいたはずだったのだ。

 台所の棚に入れてあるストックが最後の一本になっていて、『ああ、買い足しておかないといけないな』と思いながら冷蔵庫にビールを入れた記憶があるのだが……俺の記憶違いなのだろうか?
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