不安の滓
 いや、それほど気にするような事でも無いのだろう。

 例えば、宅急便が来たときに、いつも戸棚に置いてあったはずの印鑑が見当たらなかったり。
 必要な時に限って使用できるボールペンが一本も無かったり。
 いつもの場所にテレビのリモコンがなかったり。

 全て良くあることだ。
 そして、その全てに共通する原因が『記憶違い』と『ついウッカリ』なのだ。

 俺のビールが無いことも、ツマミが切れていることも――原因はきっと同じなのだろう。
 俺がやった、あると思い込んでいるだけで、実際は無かった。

――そう思っていたのだが。
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