不安の滓
 火葬炉の扉が閉じると同時に、母や他の親族のすすり泣くような声が聞こえる。
 私のように、大して親交が無い人間でも荼毘に付されるとなれば、多少の悲しい気持ちも湧いてくる。
 生前を知っている人間ともなればその悲しみも大きいものなのだろう――そう感じる。

 ほどなくして、火葬が終わり叔父のお骨を拾う段になるまで待合室へと移動することになった。

 喪主である祖母を先頭にして、親族がぞろぞろと移動する。
 私はその後ろに付いて移動しようとした、その時だ。

「ふう……」

 火葬場の係員の大きなため息が耳に入ってきた。
 表情を見ると、沈んでいるような、それでも安堵しているような顔をしている。

 葬式という、一連の退屈な儀式の中で、何か興味をそそられる光景だったのだ。
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