不安の滓
「やっぱり、知らない人でも火葬炉に火を点けるって嫌な気分になるものですか?」

 私は、親族の列から離れ、初老の係員に声をかけていた。
 叔父の遺体が灰になり、お骨を拾えるようになるまで約一時間もあるのだ。普段、話を聞く機会などない火葬場の係員の心情、これは良い時間潰しになるように思えた。

 係員は、私からの急な質問に驚いた様子を見せたものの、一つ『ハア』という短いため息を吐いた後、私の質問に答えだした。

「いえ、確かに良い気分では無いですけどね」

 そう言いながら、既に火が入った火葬炉の扉をしげしげと見つめる。
 火葬炉からは『ゴオォ』という、炎を何かを燃やしていく音が響いてくる。

「でも、ため息を吐いてらっしゃいましたよね?」

 まだ、沈痛な面持ちを見せる係員に質問をぶつけてみる。
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