宮野さんはいつも困ってる
私もからからになってる喉に、少しだけ流し込む。

「今日、学校に行ったらクラスメイトがひとり、いなくなってた」

「ふーん。
家の都合とかじゃないの?」

右腕はソファーの背に載せ、左手でお兄ちゃんは私の髪をいじってくる。

髪をいじってくるのはお兄ちゃんが隠し事をするときの癖だ。

「確かに、家の都合だって云ったけど。
こんなに急なのおかしい。
お兄ちゃんまた、なにかしたんでしょ?」

「家の都合ならそれでいいじゃないか」

「急な家の都合で転校した子、いままで何人いたと思うの!?
もう高校生なんだよ!
こんなの、嫌だ……」

泣きたくないのに涙はぽろぽろこぼれ落ちていく。
泣き出した私にお兄ちゃんは大きなため息をついた。

「知らない方がおまえのためだ」
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