宮野さんはいつも困ってる
ぎゅっと身を縮こまらせてた私に、明石くんはぷっと小さく吹き出した。

「きっと猫かなにかだよ。
怖いんだったら、ほら」

目の前に差し出された手。
そーっとその手に自分の手を載せると、ぎゅっと握ってくれた。

「これなら大丈夫だろ?」

……ただ熱い顔で頷いた。

私たちを追うように、かさかさという音は断続的についてくる。
明石くんは猫だって云ってた割にやっぱり怖いのか、少しずつ歩くのが早くなっていった。
音と追いかっけっこをするように森を抜け、神社の前に飛び出る。

同時に私たちの前に姿を見せたのは……。

「……狸?」

懐中電灯に映し出されたのは、猫にしては大きく、犬にしては丸いフォルムの生き物。
それは私たちと目が合うと、そそくさと逃げていった。
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