宮野さんはいつも困ってる
首を振ると、もっとぎゅっと抱きしめられた。
どくんどくんと早い明石くんの鼓動が聞こえる。

……そっか。
明石くんもこんなにどきどきするんだ。

見上げると、愛おしむ、そんな瞳がレンズ越しに見えた。
明石くんの両手がそっと、私の顔にふれる。
どくどくと早い鼓動ばかりが耳につく。

「萌花……」

少し掠れた声で初めて名前を呼ばれ、静かに目を閉じた瞬間。

「あー、おまえ、萌花になにしてんだよっ!」

 どかっ!

「痛いなー。
君こそなにするんだよ?」

……追いついた葵ちゃんに明石くんは思いっきり頭突きをされ、笑ってる割にはこめかみがぴくぴくしてた。
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