宮野さんはいつも困ってる
傘に入ってきた、明石くんと一緒に歩く。

自分から云っといて、なにを話していいのかわからない。
明石くんもずっと黙ってる。

無言で歩き続け、……そして。

「ありがとう。助かった」

「ううん。お役に立てたんなら嬉しいよ」

笑って見上げたら、なぜか明石くんの嬉しそうな笑顔。

「宮野はやっぱり、可愛いな……」

云われた意味がわからなくてぽかんとしてたら、次第に明石くんの顔が近付いてくる。

……眼鏡かけたまま、キスとかできるの?

混乱しすぎたあたまで、なぜか、そんなずれたことを考えながら明石くんの顔を見つめてた。

……目は閉じないと失礼ですか?

どこまでも冷静な自分がなぜかおかしい。
――心臓は恐ろしく、早く鼓動してるのに。
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