宮野さんはいつも困ってる
クッキーのお皿を手にソファーに座ったお兄ちゃんに、紅茶を淹れてあげる。
持って行くとお兄ちゃんがにかっと笑った。

「サンキュ。
うまいな、これ」

「よかったね」

今日はお世辞じゃないみたいなので、嬉しい。

お兄ちゃんは甘いものがあまり好きじゃない。
でも、私が作ったものは食べたいらしく、いつも無理して食べてる。
だから今日は、お兄ちゃん用に甘くない、チーズバジルのクッキーを焼いた。
普段はこんな面倒なことはしないけど、ここのところずっと、お兄ちゃんには迷惑かけっぱなしだから。

私の送り迎えするのに、バイトもずっと休んでる。
少しでも元気が出るように、私が好きなものをしょっちゅう買ってくれる。

私はそれに、なにも返すことができないから。
せめてもの、お礼。

ほかのクッキーは三つの袋に入れて、簡単にラッピングした。
これも、最近お世話になってる人たちへのお礼、だ。

終わると、キッチンの片づけをして、残りのクッキーと淹れた紅茶を手にリビングへ。
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