宮野さんはいつも困ってる
「うん」

セロハンを剥いで、ケーキを食べる。
私の主食は、いまはこれ。
ほかの食べ物は先生が口に入れないと食べない。

「クリームついてるぞ」

「ん」

苦笑いで先生が顔についたクリームを拭ってくれる。
にへらと笑うと、ちゅっとキスしてくれた。

「食ったんなら、風呂に入るか」

「うん」

先生と一緒にお風呂。
先生は私の髪を洗って身体も洗ってくれる。

「先生。
背中、洗いますね」

「おう」

スポンジを受け取って、先生の背中を流す。
こんなことまでしてるのに、私たちのあいだにはやっぱりキス以外なにもない。
お風呂から上がると先生は仕事を始める。
仕方ないから、布団に潜り込んで後ろからずっと、先生のシャツを掴んでる。

終わると、電気を切って先生が布団に潜り込んでくる。

「おやすみ、宮野」

「おやすみなさい」

先生からキスをもらって、腕の中で眠る。

もうひと月、こういう生活をしてる。
お兄ちゃんは私がここにいるのを知ってるはずなのに迎えにこない。

先生だけが、私を大事にしてくれる……。
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