アフタヌーンの秘薬

「大丈夫……」

「まあ毎日お茶飲んでれば平気だろ」

「お茶にはビタミンCが多いっていうからね」

「勉強してるじゃん」

「そこそこに」

気がつけば聡次郎さんと自然な会話ができている。それが楽しいとさえ思えてきた。このままうまく婚約者のふりができればいい。これ以上聡次郎さんを意識しないでいられるように。



◇◇◇◇◇



新茶の予約が締め切り、全国に大量のお茶を発送する時期がやってきた。
本店で注文を受けたものは作業場で商品を箱に詰め、発送手続きをすることになっている。

「商品管理部が箱に注文された物を入れてくれているので、三宅さんはリスト通りに入っているかチェックしてください。大丈夫なら棚に積んでいってください」

「かしこまりました」

花山さん監視の下、商品管理部と協力して商品を箱に詰めていく。

この会社は新茶と海苔をセットにして発送で、こっちは新茶が3セット。こっちは同じセットを5ヶ所に分けて発送で、その内1つが海苔入り……。

お客さんによって注文内容も異なり間違えないように箱に入れなければいけない。

「三宅さん、このお客様のご自宅には新茶は4つでいいのかしら? 毎年5つのご注文なんだけど、今年は変わったの?」

「えっと……」

花山さんの指摘にリストを確認すると注文は5つとなっていた。

「すみません、5つでした……確認不足ですみません……」

< 110 / 216 >

この作品をシェア

pagetop