アフタヌーンの秘薬
「抹茶が入っているからいい色。いただきます」
味わう私に対して聡次郎さんは味など気にすることもなくゴクゴクと飲んでいる。
「コクがあっておいしい」
「抹茶ありきだな。去年まで販売していた秋の商品に抹茶は入っていなかった。秋に目玉になるようなインパクトに欠けてたから抹茶を入れたんだよ」
「聡次郎さんの案?」
「いや、提案としては春のときからあったんだけど、兄貴が冒険したがらなくてずっと毎年変わらない味だったんだ。でも今年から入れろよって言ったのは俺」
お茶のことなんて私より知らないのではと思っていたのに、やはり会社の幹部らしいことはしていたんだと感心する。
小さい頃から経営教育を受け会社を引き継いで安定させることに集中する慶一郎さんとは対照的に、聡次郎さんは各部署からのアイディアを拾っては挑戦する意志があるのだとこの間社員さんが言っていたっけ。
食べ終えたお弁当箱を洗ってランチバッグにしまい、もう1口お茶を飲んだ。
「ほっとする……」
言葉が自然と出てきた。お茶を飲むと心が安らぐ。
元々お茶は高い健康効果があるけれど、風邪気味の私には体中に栄養が染み渡っていく気がする。今では食後にお茶を飲みたいと自然と思えるほどに私の生活にお茶が馴染んでいる。
リラックスする私に聡次郎さんは微笑んだ。
「休憩できた?」
「え? うん……」
「たまには休めよ。別にここにたくさん出勤する必要はないぞ」