アフタヌーンの秘薬
「座ってろよ」
聡次郎さんが食器棚から急須を出したから、私はソファーに座って聡次郎さんを見ていた。
最初にここにきたときに出された龍清軒は濃くて苦いお茶だった。あれから聡次郎さんもお茶を淹れるのがうまくなった。
私のことが嫌いなのだと思っていた。意地悪な言葉をかけられて怖いと思ったことは何度もあった。そんな聡次郎さんと一緒にいて安心すると思える日が来るなんて思わなかった。
どこまでも優しい聡次郎さんに戸惑う。喧嘩して強引にキスされて、かと思ったら看病されて優しいキスをされた。
この関係を発展させたいと聡次郎さんが思ってくれるなら私もそれに応えたい。
「ほら」
テーブルにマグカップが置かれ、その横にプリンのカップとスプーンが置かれた。
「ありがとうございます」
「変な組み合わせだな」
プリンと緑茶。風邪のときは普通なら組み合わせない。
「これには合わないけど、抹茶プリンはおいしそう。龍峯の抹茶と牛乳とお砂糖。今度作ろうかな」
「こんな時でもメニューを考えてるのかよ」
「一応カフェ従業員でもありますから」
プリンを食べてお茶を啜る。体調が悪いのを忘れるほどリラックスできる。私にとってお茶は薬にもなるようだ。
「ごちそうさまでした」
流しにマグカップを置いて寝室に行くと、聡次郎さんはクローゼットから毛布を出した。
「じゃあ俺はソファーで寝るから」
「え? 聡次郎さんが寝室で寝てよ」
「病人をソファーで寝かせられるかよ」