アフタヌーンの秘薬
「でも聡次郎さんの部屋だから……」
「いいって」
聡次郎さんは私の腕を引いてベッドまで連れて行くと、乱れた毛布を整えた。仕方なく私はベッドに入った。
「おやすみ」
リモコンで電気を消して寝室を出て行こうとした聡次郎さんの腕を「待って」と掴んだ。
「やっぱり私が向こうで寝るから」
看病してもらって泊めてもらうのにソファーで寝かせるわけにはいかない。
「ああもう!」
聡次郎さんは髪を掻きむしるとベッドに上がり私の横に寝転んだ。
「俺がここで寝ればいいんだろ?」
「じゃあ私は……」
ベッドから下りようとしたけれど、毛布の中で聡次郎さんの手が私の手を握った。
「梨香もここ」
「え?」
まさか一緒に寝る気なのかと驚いた。
「行くな」
暗い寝室では聡次郎さんの顔が見えない。今どんな顔で私の手を握っているのだろう。
「安心しろ。病人に何もしないから」
そう言われても横に聡次郎さんがいて安眠できるわけがない。
「無理矢理キスされたのに信用できない」
意地悪なことを言ってしまった。だって強引なキスも忘れたわけじゃないのだから。
「もうしないよ。梨香を大事にするとも言っただろ?」
確かにそう言った。でもその言葉とは裏腹に握った手は指を絡めてきた。
「本当に何もしないのなら、この手はなに?」
「こうでもしないと梨香は俺から逃げるだろ?」
「大事にするのに逃がさないの?」
「そうだよ。俺が独占欲強いってもうわかってるだろ」
本当に聡次郎さんは子供のようにワガママで独占欲が強い人だ。