アフタヌーンの秘薬
「もっと梨香を知りたくて、そばにいたいと思った。梨香に好きだと伝えるもっとずっと前から梨香が好きだったよ」
涙が溢れて止まらない。
「全然知らないよそんなこと……だって聡次郎さんずっと意地悪だった……」
「俺さ、今までまともに恋愛してこなかったんだよ。家柄目当てで寄ってくる女ばっかだったし。素直に気持ちを出す方法がわからない」
聡次郎さんは「明人にも散々怒られた」と困った顔をした。月島さんは聡次郎さんを理解している。聡次郎さんが素直になれないことも。
「付き合った女も母さんが金をちらつかせて追い払ったこともあった」
それは驚きだ。けれどあの奥様なら気に入らない相手はお金で遠ざけて解決しそうだ。
「これからは梨香に不自由はさせない。不安にさせない。絶対に幸せにする。だから家族になろう。俺を支えてほしい」
聡次郎さんの真っ直ぐな目から私も目を逸らさない。
「はい。よろしくお願いします」
そう言うとどちらからともなく顔を近づけ、今度は自然に唇を重ねた。
「ふっ」
聡次郎さんが突然笑った。
「どうしたの?」
「いや……梨香ってやっぱ嫉妬すると訳わかんない行動するよな」
「聡次郎さんには言われたくない!」
笑う聡次郎さんに私は顔を真っ赤にして言い返す。
嫉妬深いのはどっちだ。奇想天外な言動で振り回したのはどこの誰だ。