アフタヌーンの秘薬
「ああ」
素っ気ない返事を聞くと急須にお茶の葉を少し足した。
「皆さんも飲まれますか?」
給湯スペースから顔を出し会議室に残った他の社員にも聞いたけれど、みんな首を横に振った。聡次郎さんの顔色を伺っているようだ。その聡次郎さんは不機嫌丸出しといった表情で私を見ている。
「そうですか……」
顔を引っ込めると今度は私が機嫌を悪くして顔を歪ませた。まるで聡次郎さんが会議室の雰囲気を暗くしてしまったようで腹が立った。一応私は龍峯で働いていこうと思っているのだ。嫌な印象を残してほしくないのに。
2人分のお茶をトレーに載せてテーブルに運ぶと、社員は書類をまとめて会議室から出て行ってしまった。聡次郎さんと2人きりで会議室に残されてしまった。
「もう、社員さん逃げちゃったじゃないですか」
「逃げたわけじゃないだろ。飯食いに行ったんじゃね?」
自分が追い出したかもなんて少しも考えない言葉に呆れる。
「どうぞ」
聡次郎さんの前にやや乱暴に湯飲みを置いた。
無言でお茶を飲む聡次郎さんを視界から追いやって目の前のお弁当に集中する。
「いただきます」
我ながら美味しいお弁当を作ってしまった。すぐに機嫌が直った私はジャーマンポテトを口に入れた。
「まあまあだな」
私が淹れたお茶を飲んだ聡次郎さんはまたしても微妙な感想を言った。
「そうかな……上達したと思ったんだけど……」