アフタヌーンの秘薬
川田さんに指導され練習用のギフトボックスで何度も包む練習をした。
「慣れないうちはテープで端を止めちゃった方がやりやすいかも」
「はい……」
包装紙はたくさんの折り目がつきボロボロだ。
「大変、松山様だわ」
川田さんの慌てた声にお店の外を見ると着物を着た女性がお店に入ってこようとしている。
「あの方は気を遣うお客様なのよ」
それはどういうことだと詳しく聞こうとする前に松山様がお店に入ってきた。
「いらっしゃいませ」
私と川田さんはお辞儀をして松山様を迎えた。
「こんにちは」
松山様は50代くらいの女性でどことなく品がある。
「今日は玉露を淹れてもらおうかしら」
玉露といえば最上級のお茶だ。他のお茶と違って淹れ方にも気を遣う上に高価で練習することができないから、玉露に関しては私はまだ淹れたことがない。
松山様は店内を見渡し、立ち尽くす私に目を留めた。
「あら、新人さん?」
「はい、三宅と申します。よろしくお願い致します」
「今日はあなたに淹れてもらおうかしら」
そう言われて焦った。
「あの、でも玉露は私には……」
「いえいえ、あなたが玉露を淹れるなんて無理なのは知っています。龍清軒をお願い」
松山様は「ほほほ」と上品に笑ったけれど、私はバカにされているように感じた。
「かしこまりました」
緊張しながらもいつものようにお茶を注いで松山様が待つテーブルに置いた。